
制度が用意されても、実際に労働者が利用できなければ意味がありません。今回の改正に対応するには、労働者が制度を使いやすいように具体的な運用体制を整える必要があります。
本記事では、企業が準備すべき育児に関する実務対応を具体的に解説します。
まず取り組むべきは就業規則の見直しです。
条文化:残業免除や子の看護休暇、短時間勤務制度を規程に明記する。柔軟な働き方制度については自社が整備する制度を明確に記載し、対象者が選択できる形にする。
申請フロー:申請様式や申請フォームを整え、手続きの負担を減らす。
周知:労働者への説明会を実施する
。
この段階では、厚生労働省や労働局が提供する「規定例」「雛形」を参考にすることが実務上有効です。
2025年10月からは、妊娠・出産等の申出時と子が3歳になる労働者に対して仕事と育児の両立に関する意向を聞き取り、その結果を踏まえて配慮することが義務化されます。
方法:面談、書面交付、FAX、電子メール
聴取内容:勤務時間帯(始業および終業の時刻)、勤務地、両立支援制度の利用期間、仕事と育児の両立に資する就業の条件(業務量、労働条件の見直し等)
単なる制度整備だけでなく、労働者の声を反映する仕組みを作ることが、法令遵守と労働者の満足度の双方につながります。
業種や職種によって最適な対応は異なります。
製造業:交替制勤務のため、早番固定や短時間勤務制度を組み合わせて利用しやすくする。
医療・福祉業:シフト勤務者が多いため、代替要員を確保しつつ子の看護休暇を取得できる環境を整える。
小売・サービス業:テレワークが難しい職種では、始業時刻の調整や養育両立支援休暇の導入を優先する。
自社にあった制度をカスタマイズすることで、実効性の高い制度運用が可能となります。
改正育児・介護休業法は、制度を「整備する」だけではなく「使える」ようにすることを企業に求めています。
就業規則の改定、労働者への周知、意向聴取の仕組みづくり、職種ごとの柔軟な対応に加え、全体を見据えたロードマップを描き、段階的に実行していくことが不可欠です。こうした取り組みは労働者の定着率や採用力の向上につながり、企業の持続的な成長にも寄与するでしょう。
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