裁量労働制とは?導入前に知っておきたい実務ポイントとリスク

働き方の自由度は高いが“魔法の制度”ではない

「裁量労働制を導入すれば、残業代を気にせず働かせられる」――そんな誤解を耳にすることがあります。

しかし、これは大きな間違い。裁量労働制はあくまで『一定の専門業務や企画業務に従事する労働者に限り、“みなし労働時間”を設定できる制度”』であり、誰にでも適用できるわけではありません。

制度を誤って運用すれば、未払い残業代の請求や労働基準監督署からの是正指導につながるリスクがあります。
今回は、裁量労働制の基本と実務上のポイントを整理してみましょう。

裁量労働制とは?

通常、労働時間は「実際に働いた時間」を基準にカウントされます。
一方、裁量労働制では、実際の労働時間に関わらず、あらかじめ定めた時間を働いたものとみなすことができます。

たとえば「1日8時間」と定めれば、6時間で仕事を終えても8時間働いたとみなし、逆に10時間働いても8時間とみなされます。

裁量労働制の2つの種類

(1) 専門業務型裁量労働制

(2) 企画業務型裁量労働制

いずれも、全労働者に一律で適用することはできない点が重要です。

導入のメリット

デメリット・リスク

導入時の注意点

  1. 対象業務を厳格に確認する
    適用できるのは限られた業務のみ。管理職や一般事務に安易に適用するのはNG。
  2. みなし労働時間の設定を慎重に
    平均的な所要時間を基に設定し、極端に長くならないよう配慮する。
  3. 健康管理措置を徹底
    裁量労働制でも、労働安全衛生法に基づく労働時間の把握義務は残ります。
    → 出退勤時刻の把握、面接指導、勤務間インターバル制度の導入などが推奨されています。
  4. 労働者とのコミュニケーション
    「なぜ導入するのか」「どう評価するのか」を説明し、納得感を得ることがトラブル防止につながります。

よくある誤解Q&A

Q1:裁量労働制なら残業代は払わなくていい?
誤り。深夜労働や休日労働の割増賃金は支払い義務があります。

Q2:全労働者を裁量労働制にできる?
できません。専門業務型なら20業務、企画業務型なら事業運営に関する企画・立案・調査・分析に従事する労働者。

Q3:労働時間の記録は不要になる?
不要にはなりません。健康管理の観点から、実際の労働時間の把握は求められます。

チェックリスト:導入準備はここまでできている?

まとめ

裁量労働制は「労働者に自由を与える制度」であると同時に、企業側に高度なコンプライアンス運用が求められる制度です。

この3つを押さえて初めて、『自由な働き方』を後押しする制度として機能します。
逆に、安易に導入すれば、労務トラブルや法違反のリスクを高めてしまいます。

「残業代対策」ではなく、「自律的な働き方の推進」という本来の趣旨に立ち返って活用していきましょう。

 

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