タイムカードはなぜ必要?法的義務とデジタル化の波

出勤時にガチャンと打刻し、退勤時にもう一度。
タイムカードは、長らく勤怠管理の“象徴”でした。ですが近年は、ICカードやクラウド打刻、スマホアプリなど、管理方法が大きく変わっています。

「うちは小規模だから紙で十分」「システム化はコストがかかる」――そう思っている企業も多いはず。
しかし、労働基準法では労働時間の適正な把握が企業に義務づけられており、厚生労働省はタイムカード等の客観的記録を重視しています。
つまり、タイムカードの運用は単なる慣習ではなく、法令遵守の根幹でもあるのです。

タイムカードの法的な役割

厚労省のガイドライン(「労働時間の適正な把握のためのガイドライン」)では、労働時間を把握する方法として以下が推奨されています。

ポイントは、客観的な記録であること
自己申告制だけで管理している場合、不十分とされ、企業側に是正指導が入ることがあります。

タイムカードで記録すべきこと

タイムカードは単に「出勤・退勤時刻」を記録するだけでなく、次のような活用が求められます。

  1. 所定労働時間の把握(始業・終業時刻)
  2. 残業時間(時間外労働)の算出
  3. 休日労働・深夜労働の管理
  4. 有給休暇取得日の記録(勤怠との整合性)

これらは給与計算の根拠であると同時に、万が一の労務トラブル(未払い残業代請求など)の際には証拠資料として重要になります。

紙のタイムカード vs デジタル管理

紙のタイムカードのメリット・デメリット

デジタル管理(勤怠システム)のメリット・デメリット

中小企業でも近年はクラウド型の低コストシステムが増えており、「紙より安くて便利」というケースも少なくありません。

タイムカードと労務リスク

労働時間を正しく記録していないと、企業は大きなリスクを抱えることになります。

逆に言えば、タイムカードやシステムでの客観的な記録が整っていれば、企業防衛の力強い武器になります。

実務での運用ポイント

  1. 「形だけ打刻」を防ぐ
    代理打刻や退勤後の隠れ残業を防ぐ仕組みを整える。
  2. 36協定との突き合わせ
    タイムカードの時間外労働と、締結済みの36協定内容を必ずチェック。
  3. 保存期間を守る
    労働関係書類の保存義務は5年間(当分の間、3年間)。タイムカードもこれに含まれるため、廃棄時期を誤らないこと。

チェックリスト:御社のタイムカード管理は大丈夫?

まとめ

タイムカードは単なる“出退勤の記録”ではなく、労働時間管理の要です。
労基署対策・未払い残業リスク回避・社員の健康管理――どれをとっても、勤怠記録の精度が企業の信頼を左右します。

「紙のカードからシステムへ」移行するかどうかは企業規模やコスト次第ですが、いずれにせよ重要なのは、正確で客観的な記録を残すこと
その意識を持つだけで、労務トラブルを大きく減らし、安心して働ける環境を作ることができます。

 

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